週刊わやソング2001.1.12号(21世紀第2号)  前号へ  次号へ  バックナンバーへ

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20世紀末コオロギ      2001.1     MP3で聴けます(一番盛りあがる5番を収録)


僕らは富士サファリパークで ある家族と出会った
天気が悪く富士山が見えなくて がっかりしてたけど
ライオンやトラは見られたし 僕らをお土産にもらえて喜んでいた
でも僕らは知っている 本当はスズムシの方がよかったってこと
  

僕らはそんなには生きないと 期待はされていなかった
プラスチック製の飼育箱 それがむしろ目的だった
男の子は箱を持ちたがり 元気に振りまわして歩いた
天地が何度もひっくり返り 死ななかったのは奇跡だった
  
  20世紀の終わり 僕らは懸命に生きた
  命の限り僕は鳴いた コオロギとして

世話をしてくれたのは 子供達の父親だった
キュウリやレタスをくれた 煮干も一匹入れてくれた
僕は元気を取り戻し 鳴くことで恩返しをした
次第に上達した鳴き声は 家族をうならせるほどになった
  

その箱は僕らには世界の全て 僕には彼女しかいなかった
彼女は僕には冷たかった 選ぶしかない運命(さだめ)なのに
僕は懸命に鳴いた この恋を実らせるために
21世紀に僕の 遺伝子を残すために
  
  20世紀の終わり 僕らは懸命に生きた
  命の限り僕は鳴いた コオロギとして

時は流れ秋が深まり 冬になっても僕らは生きていた
僕らの素晴らしい生命力は 家族を驚かせ続けた
僕はまだ死ぬわけにはいかない 彼女とはまだ一つになっていなかった
事が済めば死んでもかまわない 僕には全てわかっていた
  
  20世紀の終わり 僕らは懸命に生きた
  命の限り僕は鳴いた コオロギとして

クリスマスイブの夜に 家族は僕らの死に気付いた
ツリーの蔭になっていて 見えにくかったのは確かだった
僕の頭は彼女に齧られていた 彼女は綺麗なままだった 
彼女が卵を産めたかどうか 僕は知らないが信じたい 
  
  20世紀の終わり 僕らは懸命に生きた
  命の限り僕は鳴いた コオロギとして

  20世紀の終わり 僕らは懸命に生きた
  命の限り僕は鳴いた コオロギとして



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 コオロギなんて庭にもいっぱいいるし、魚や爬虫類の餌として売られているくらいだから、ボクはこの年になるまで飼ったことはなかったし、飼おうとも思っていませんでした。でも出会いは素晴らしい。ひょんなことから飼うことになったコオロギですが、飼ってみるとその鳴き声はボク達家族をたっぷり楽しませてくれました。
 残念なことに卵はどうやら産んでいないようです。でも、こうして歌にしたことで、彼らの生きた証になれば幸いです。できれば年末を生き延びてもらって「新世紀コオロギ」の歌としたかったのですが・・・。
 それにしても人間は幸せです。何十年も生きて、たくさん恋をして、自分の子供を育てられたりもします。生まれ変わってもまた人間がいいですよね。でもこの歌、ボクは歌っているとコオロギになりきり、こういう人生もあるよな、などど思ったりもするのです。今年の秋、また懸命に生きるコオロギ達の声を聴くのが楽しみです。

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