週刊わやソング2000.8.4号  前号へ  次号へ  バックナンバーへ

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「バルコニーの鳩」        1991.6     MP3で聴けます(2003.3.2更新)

ここは名古屋市北区上飯田矢田川の土手沿いの 鉄筋コンクリートの11階建ての公団住宅
そのうちの3号棟の7階の東向き2DK 仲睦まじい若い夫婦が平和に暮らしていた

事の起こりは春とはいえまだ寒さの残るある日 バルコニーのプランターの中にそれを見つけた
最近特に朝っぱらからホロッホローとうるさくて 嫌な予感が全く無かったわけではないのだった
    
白い卵が有った ウズラ卵くらいの大きさの
白い卵が有った 初めて見る鳩の卵だった

いったいこれはどうしたものかと若い夫婦は考えた なぜどうしてよりによってこんなところにと首をひねった
だがしかしせっかく生まれた小さな命だもの 孵るとはとても思えないけど見守ってやりましょう

次の朝覗いて見たら卵は2個に増えていた 心の広い若い夫婦にはほほえましいニュースだった
母親らしき鳩が1羽温めに来るようになった 夫婦は鳩を驚かさないように息を潜めてた

普通のドバトだった 不安そうにキョロキョロと落ち着かない
普通のドバトだった 文字通りのハト胸に卵を抱いていた

若い夫婦は飼いたくも無く飼えるはずも無いのだが だんだんと小さな卵に愛着を感じてた
なるべく親鳩が安心して卵を抱いていられるように バルコニーはガラス越しに眺めるだけにしておいた

もちろんのこと洗濯物は干さなければならないし パセリやレタスやアロエその他植物に水をやるために
時々は「やあやあ鳩くん逃げなくてもいいんだよ」などと 声かけながら近寄るとやっぱり鳩は飛んでった

優しい気持ちになった 自然と人との関わりについて想い
優しい気持ちになった 無事に育つことを祈っていた

いつまでたっても孵る様子がないので心配をしていた 少しずつ慣れてきたとはいえ親鳩も落ち着きが無くて
温めている時より居ない時のほうが長いような そんな気さえしてもうほとんど諦めかけていた

死んでしまった卵を知らずに抱きつづけているのではと 無邪気な瞳の親鳩が可哀想に思えた
ところがあるとき気が付いたハト胸の下で動くもの まぎれもなく鳩の雛だった2羽とも無事に孵ってた

たくましい命だった もう既にかなり大きくて
たくましい命だった 2羽ともとても元気だった

初めのうちは雛は2羽ともとても可愛いやつだった 日増しに大きくなるのを見るのが楽しみな夫婦だった
親鳩が雛の大きく開けた口にクチバシ突っ込んで 餌を与える姿もなかなかに感動的だった

ところが近づいて見るとあきらかに事態は悪化していた プランターの中にはいつのまにか雛のフンが積もっていた
気を効かせてプランターを掃除したのは逆効果 被害の範囲はバルコニー全体に広がった

汚いバルコニーになった 辺り一面鳩のフンだらけ
汚いバルコニーになった 早く居なくなってと思い始めた

成長するにつれてフンの量は確実に増えていった さらに餌をくれとねだる声がやかましくなっていった
寝苦しい夜にも窓を開けてはいられなくなってきた お隣さんも迷惑らしく隙間を塞いでしまった

鳩は臭くて汚くてうるさくて近所迷惑で 大切に育てた野菜や花を踏み荒らしてくれた
「もうあたし我慢できない早くどこかへ捨ててきてちょうだい」と 言いたくなるのを抑えてたけど限界は近づいてた

とっとと出ていっておくれ 若い夫婦は心から願っていた
とっとと出ていっておくれ 鳩は知らんぷりキョトンとしていた

親鳩が羽ばたいたそのあとをじっと見てるだけだった雛も 手すりの上を歩き回れる位にはなっていた
もう既にほとんど親鳩と同じ位の大きさで クチバシこそフニャフニャだけど羽は一人前だった

叩きつけるような激しい雨が爽やかに晴上がった朝 待ちに待った巣立ちの日がとうとうやってきたのだった
偶然にもその日は若い夫の28回目の誕生日 何はともあれ大変めでたい記念すべき日になった

鳩は居なくなった 若い夫婦は心から喜んだ
鳩は居なくなった 少し寂しさも感じていた

あれから幾日かが過ぎて本格的な夏が来て 相変わらず若い夫婦は幸せに暮らしていた
今でも時々鳩がバルコニーの手すりにやってくる ここで生まれ育ったのだろうか態度がでかいやつ  ラララ


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 生き物を飼うことは嫌いではありません。いま、うちではミニウサギ・カメ・熱帯魚・カブトムシを飼っています。
 面白いことにネットのお友達の晴美♪さんのお宅でも同じような(ウサギではなくプレーリードックです)生き物達を飼っているのですが、さらに笑えるのがベランダでハトを育ててしまったとのこと。ボクも9年前にバルコニーに卵を産み付けられ、ヒナが巣立つまでのドラマを歌にしたのを懐かしく思い出し、エールを送る気持ちで取り上げました。

 ボクの歌には結構動物を取り上げたものが多く、それらを総称して「動物シリーズ」としています。ざっと挙げてみると、猫、犬、ハト、ラッコ、タコ、トナカイ、サカナ(各種)、しろあほうどりってとこでしょうか。
 #ラッコってぬいぐるみやん
 #タコってたこ焼きやん
 #トナカイって「サンタさんがやってくる」にちょこっとでてくるだけやん

 猫については「さすらいのニャンピー」が結構泣かせ(笑わせ)ます。そろそろ犬を飼いたいのだけれど、現在生き物係りとして多忙な毎日を送っている僕としては、息子達がちゃんと世話できるようになってからにしたいのです。まだまだじゃのう(-_-)    ・・・そういえばカタツムリもいたっけ。

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