週刊わやソング2001.8.13号(21世紀第29号)  前号へ  バックナンバーへ

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フクタロウ    2001.8     MP3で聞けます


その犬は運が良かったのだ 製薬会社の実験用動物の子として生まれ
親と同じ運命だったかもしれないのだ その子犬はたまたまある研究者の目にとまり
自宅に引き取られていったのだ そこはボクの妻となる人の家だった
両親と娘二人 郊外の一軒家 庭の手作りの小屋で暮らすことになった
 フクタロウと名付けられた子犬は すくすくと育った
 ごく普通の飼い犬として 幸せに生きた

その犬は勘が良かったのだ 番犬としてはいささか人なつこすぎて
誰にでも愛嬌を振りまいていたのだ ただ一人、その家の長女のお客として来る
若かりしころのボクにだけはなぜか いつも激しく吠えかかったのだ
やがて長女が結婚して家を出てしまう まるでそのことを予感していたかのように
 フクちゃんと呼ばれた雑種の犬は 賢そうな目をしていた
 ごく普通の飼い犬として 幸せに生きた

その犬は性(しょう)が良かったのだ 散歩に連れて行って欲しいときは吼えて
散歩では綱を引っ張って前を歩くのだ そこかしこにマーキングをしまくるし
お手やお座りはなんとかやるけれど 特に芸ができたわけではない
つまり躾は全然ダメだったわけだが 性格は本当に良かったのだ
 フクタロウという名のオス犬は 生涯独身を貫いた
 ごく普通の飼い犬として 幸せに生きた

その犬は結構長生きしたのだ 晩年は足腰が衰え寝てることが多くなり
さすがに年を感じさせてはいたのだ 定年退職をしたその家の主が
毎日散歩をさせてくれるのには 無理して付き合っていたのかもしれないが
ボクはもう一度散歩に連れて行けば良かった それだけがそれだけが心残りなのだった
 フクちゃん フクちゃんと愛された犬は 16年生きた
 ごく普通の飼い犬として 幸せに生きた

 フクちゃん フクちゃんと愛された犬は 16年生きた
 ごく普通の飼い犬として 幸せに生きた

 幸せに生きた


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 動物を飼うのはいいのですが必ず別れのときがやってきます。でも人はなにか動物を飼うべきだと思います。この歌は自分で飼っていた犬ではないのですが、どうしても彼が生きていたことを残したくて作りました。全て実話です。

 補足ですが、生涯独身というのはそうなのですが、彼女は居たらしいと聞きました。なんかうれしい。そう、「幸せ」と断じてますが、これは願望だけかもしれません。でもそう思いたいのです。
 

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